海外旅行や出張で航空券を予約した際、思ったより高額な請求に驚いたことはありませんか?その原因のひとつが、航空券の基本運賃とは別に加算される 「燃油サーチャージ」 です。当記事では、燃油サーチャージの意味や仕組み、ANAとJALの最新情報から、賢く節約するコツや裏技までを旅行者目線でわかりやすく解説していきます。
燃油サーチャージとは?
燃油サーチャージの意味
燃油サーチャージ(Fuel Surcharge)の正式名称は「燃油特別付加運賃」と言います。主に国際線運賃に上乗せして徴収されます。
<国際線チケット代の構成>
- 運賃+諸税(空港税など)+燃油サーチャージ
燃油サーチャージは、飛行機の運航に必要な燃料(=ジェット燃料)の価格が高騰した際、そのコストを利用者と分担するための制度です。
原油価格は国際情勢や需給バランスの影響を受けて大きく変動するため、航空会社はこの変動を反映させる形で燃油サーチャージを導入しています。
燃油サーチャージの必要性と導入の背景
航空燃料費は、航空会社にとって運航コストの中でも非常に大きな割合を占めています。
価格が急激に上昇すると、航空券の基本運賃ではコストをカバーできなくなるため、その差額を「燃油サーチャージ」として利用者に負担してもらう形をとっています。
この仕組みがあることで、航空会社は価格変動によるリスクを緩和しつつ、安全かつ安定した運航を維持することができます。
燃油サーチャージの仕組み
シンガポール・ケロシン価格と為替レートに影響を受ける
燃油サーチャージは、シンガポール・ケロシンの円建て価格を元に計算されます。
「シンガポール・ケロシン」はジェット燃料のもとになる石油成分の一つ(ドル建て価格)です。原油価格と連動性が高くなっています。
たとえば、日系の航空会社である「ANA」と「JAL」では、このシンガポール・ケロシンの2ヶ月平均を円建てに直して燃油サーチャージを計算しています。
シンガポール・ケロシン価格はドル建てになっているため、ドル円の為替レートの変動も燃油代の算出に影響を受けます。
原油高や円安では高騰する結果になります。
<燃油代に影響を与える要素>
- シンガポール・ケロシン価格(ドル建て)
- ドル円の為替レート
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飛行距離が長くなれば燃油サーチャージも高くなる
飛行距離が長くなればそれだけ多くのジェット燃料を消費します。そのため、燃油サーチャージは飛行距離が短い区間は「安い」、長い区間は「高い」という関係にあります。
例えば、日本発着便で目的地がソウルの場合は「3,300円」ですが、ハワイの場合は「31,900円」と約10倍にもなります(いずれも2025年6月から7月に適用されるANAの燃油サーチャージ)。
これは大きな違いですね。
燃油サーチャージは飛行距離によって変動すると覚えておきましょう。
<燃油サーチャージと飛行距離の関係>
- 飛行距離が長い=燃油サーチャージは高い
- 飛行距離が短い=燃油サーチャージは安い
燃油サーチャージの改定サイクル
原油価格が燃油サーチャージに反映されるまでは数ヶ月必要
日系の航空会社である「ANA」と「JAL」では、燃油サーチャージを2ヶ月ごとに改訂して発表しています。
改定サイクルを表にまとめると以下のようになります。
<燃油サーチャージの改定サイクル>
発券日 | 発表時期 | 算出価格 |
4月-5月 | 2月中旬から下旬 | 12月-1月の平均値 |
6月-7月 | 4月中旬から下旬 | 2月-3月の平均値 |
8月-9月 | 6月中旬から下旬 | 4月-5月の平均値 |
10月-11月 | 8月中旬から下旬 | 6月-7月の平均値 |
12月-1月 | 10月中旬から下旬 | 8月-9月の平均値 |
2月-3月 | 12月中旬から下旬 | 10月-11月の平均値 |
例えば、4月から5月の発券分は、2月中旬から下旬ごろに発表されます。約1ヶ月前に発表という感じですね。
その発表された燃油サーチャージは前年12月から1月のシンガポール・ケロシン価格の平均値および為替レートなどをベースに算出されます。こちらは2ヶ月ほどのタイムラグがあります。
つまり、算出価格が燃油サーチャージとしてチケット価格に反映されるまで数ヶ月のタイムラグがあるという形になります。
そのため、例えば足元で原油安&円高が進んでいたたとしても、すぐに燃油サーチャージが安くなるわけではありません。
ここは勘違いしやすいので注意が必要です。
燃油サーチャージは発券日が基準
燃油サーチャージは「発券日」が基準になります。つまりチケット料金の支払いの段階で確定します。搭乗日が基準でないためこちらも注意が必要です。
燃油サーチャージの最新情報
ANAの燃油サーチャージ(2025年6月から7月)
2025年4月に発表になった、ANAの燃油サーチャージは以下になります。1人あたりの片道の価格です。
ここでは比較のため最新である「2025年6月から7月」に加えて、そのひとつ前である「2025年4月から5月」の分も記載しています。
「2025年4月から5月」に比べると若干安くはなりましたが、まだまだ高い水準に位置しています。
<ANAの燃油サーチャージ>
路線 | 2025年6月-7月 | 2025年4月-5月 |
---|---|---|
日本=欧州・北米(ハワイ除く)・中東・オセアニア | 31,900円 | 36,300円 |
日本=ハワイ・インド・インドネシア | 20,400円 | 23,100円 |
日本=タイ・シンガポール・マレーシア・ミャンマー・カンボジア | 16,300円 | 18,900円 |
日本=ベトナム・グアム・フィリピン | 10,500円 | 12,100円 |
日本=東アジア(韓国を除く) | 9,400円 | 11,000円 |
日本=韓国・ロシア(ウラジオストク) | 3,300円 | 3,900円 |
ANAの燃油サーチャージの詳細はこちらからご確認いただけます。
JALの燃油サーチャージ(2025年6月から7月)
同じく2025年4月に発表になった、JALの燃油サーチャージは以下になります。1人あたりの1区画の価格です。
ここでも比較のため最新である「2025年6月から7月」に加えて、そのひとつ前である「2025年4月から5月」の分も記載しています。
こちらも「2025年4月から5月」に比べると若干安くはなりましたが、として高い水準を維持しています。
<JALの燃油サーチャージ>
区画 | 2025年6月-7月 | 2025年4月-5月 |
日本-韓国、極東ロシア | 3,000円 | 3,500円 |
日本-東アジア(除く韓国、モンゴル) | 7,400円 | 8,500円 |
日本-グアム、パラオ、フィリピン、ベトナム、モンゴル、ロシア | 9,500円 | 11,000円 |
日本-タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ロシア*2 | 15,500円 | 18,000円 |
日本-ハワイ、インドネシア、インド、スリランカ | 18,500円 | 21,000円 |
日本-北米、欧州、中東、オセアニア | 29,000円 | 33,000円 |
JALの燃油サーチャージの詳細はこちらからご確認いただけます。
JAL「国際線「燃油特別付加運賃」「航空保険特別料金」のご案内」
燃油サーチャージの計算方法
片道(1区画)ごとの徴収で往復なら2倍必要
先ほどご紹介した燃油サーチャージの価格は1人あたりの片道(1区画)のものになっています。そのため、往復なら2倍必要になります。
夫婦など2人ならさらに2倍、家族2人なら4倍というように増えていきます。
例えば、ハワイ旅行で必要な燃油サーチャージは以下になります(2025年6月から7月に適用されるANAの燃油サーチャージ)。
<燃油サーチャージの例(日本発着ハワイ)>
- 1人片道:20,400円(①)
- 1人往復:40,800円(①の2倍)
- 2人往復:81,600円(①の4倍)
- 4人往復:163,200円(①の8倍)
燃油サーチャージはファミリー層に大きな負担となることがわかりますね。
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小児や幼児も大人と同額のため家族連れの負担が大きい
有償チケットの場合、小児や幼児の場合は子供料金として割引があります。
しかしながら、燃油サーチャージの場合は大人と同額が徴収されるため注意が必要です(座席を使用しない幼児は無料)。
こちらも、燃油サーチャージは家族連れに負担が大きくなる理由になっています。
燃油サーチャージの節約術と裏技
裏技を使って燃油サーチャージを節約する
燃油サーチャージには節約するコツや発生を回避する裏技と言えるテクニックがあります。ここではいくつかご紹介していきます。
<燃油サーチャージの節約術・裏技>
- 海外旅行から国内旅行に切り替える
- 近場の旅行先に切り替える
- 燃油サーチャージが下がったタイミングで発券する
- 燃油サーチャージが下がったタイミングで変更する
- 燃油サーチャージがかからない航空会社を選択する
- 海外発券を検討する
海外旅行から国内旅行に切り替える
燃油サーチャージが必要になるのは今のところは国際線だけです(2025年4月時点)。
燃油サーチャージの発生をどうしても回避したい場合は旅行先を海外から国内に切り替えるという手もあります(ちょっと後ろ向きな方法ですが)。
国内線には目に見えない「隠れコスト」として運賃に燃油代が含まれているだけという話もあります。ただし飛行距離が国際線に比べると短いため影響は少ないと言えます。
近場の旅行先に切り替える
燃油サーチャージは飛行距離が長くなればなるほど高額になります。
そのため、燃油サーチャージが高騰しているタイミングでは飛行距離の長くなる北米や欧州は避け、近場のアジア近辺に旅行先を切り替えるのもオススメです。
燃油サーチャージが下がったタイミングで発券する
燃油サーチャージは「発券日」が基準になります。
足元で原油安、もしくは円高が進んでいるようなタイミングでは将来的に燃油サーチャージが下がることを期待して発券日を遅らせることも有用です。
ただし、有償チケットの場合、旅行日が近くなればなるほど価格が高くなる傾向があります。また、特典航空券の場合、空席が少なくなっていくため注意が必要です。
燃油サーチャージが下がったタイミングで変更する
燃油サーチャージは「発券日」が基準になります。ただし、チケットの一部に変更をかけると変更日が発券日となって燃油サーチャージの差額調整が行われます。
元々の発券日よりも燃油サーチャージが高くなっていれば追加徴収になりますが、逆に安くなっていれば差額が返還されます。
そのため、元々の発券日から旅行日の間までに燃油サーチャージが下がっている場合には、変更をかけるというテクニックを活用できます。
ただし、有償チケットの場合、変更手数料が必要になる場合が多いため注意が必要です。変換される差額よりも変更手数料が高くなってしまえば本末転倒です。
一方で、ANA国際線特典航空券の場合は変更手数料が無料のためこのテクニックを活用しやすくなっています。
国際線に乗継で国内線をセットにしている場合は、その国内線のどれかの搭乗便を変更するだけでもOKです。
<搭乗便の変更例>
- 札幌→羽田<=ここを1本前後させる
- 羽田→ホノルル
- ホノルル→羽田
- 羽田→札幌<=もしくはここを1本前後させる
地方から海外に出かける方には特に使いやすいテクニックになっています。
燃油サーチャージがかからない航空会社を選択する
日系の航空会社であるANAとJALはそろって燃油サーチャージを徴収しています。そのため、世の中の航空会社は全て燃油サーチャージを徴収していると考えがちです。
しかしながら、世の中には燃油サーチャージを徴収していない航空会社も存在しています。
まずこちらは、日本発着便があり、かつANAと提携している航空会社です。
<燃油サーチャージ無料(ANAと提携)>
- シンガポール航空
- 成田・羽田〜シンガポールなど
- ニュージーランド航空
- 成田〜オークランドなど
- ベトナム航空
- 成田・羽田〜ハノイ・ホーチミンなど
- ヴァージン・オーストラリア航空
- 成田〜ブリスベンなど
続いてこちらはJALと提携している航空会社です。
<燃油サーチャージ無料(JALと提携)>
- アメリカン航空
- 成田〜ロサンゼルス・ダラス・シカゴなど
- カタール航空
- 成田〜ドーハなど
- ハワイアン航空
- 成田・関空〜ホノルルなど
- スリランカ航空
- 成田〜コロンボなど
ANAとJALと提携という括りでご紹介しているのは、それぞれANAマイルしくはJALマイルを使って予約する特典航空券でも燃油サーチャージが無料になるからです。
マイルを使った特典航空券であれば運賃自体が無料になっていますから、燃油サーチャージが必要なければWでお得になりますね。
ぜひ知っておきたい裏技です。
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海外発券を検討する
同じ目的地でも海外空港発便にすることで、日本発着便よりも燃油サーチャージが安くなる場合があります。人気の発着地は以下になります。
<海外発券で人気の発着地>
- ソウル、シンガポール、クアラルンプール、バンコク、香港
上記の発着地であれば燃油サーチャージが必ず安くなるわけでありません。複数の航空会社を比較しながら検討することが重要です。
また、日本からはそれら海外空港まで別途チケットを用意する必要があります。そのため、節約できる燃油サーチャージと追加で必要となるチケット代のバランスが取れていることが重要です。
基本的には、海外の発着地でも観光を楽しめる方&上級者向けのテクニックとなっています。
よくある質問と回答(FAQ)
Q1. サーチャージが無料になることはありますか?
はい。燃料価格が基準額を大きく下回った場合、サーチャージが「0円」になることがあります。過去には2016年や2021年ごろ、多くの航空会社が無料にしていました。
Q2. 発券後にサーチャージが下がった場合、返金されますか?
返金されません。発券時点の料金が適用され、その後の変動には影響を受けません。
ただし、節約術と裏技のところでご紹介したように、変更をかけることで発券日を移動させて返還を求めることはできます。
Q3. LCCは燃油サーチャージがかからない?
LCC(格安航空会社)の場合、サーチャージが運賃に含まれていたり、そもそも不要なケースもあります。航空会社によって異なるため最終料金で明細を確認することが重要です。
LCCの場合、手荷物料金や座席指定、機内食など別途かかる費用に注意が必要です。
まとめ
今回は、2025年最新の情報をもとに、燃油サーチャージの意味や仕組みから、ANAとJALの最新情報、節約術と裏技まで詳しくご紹介しました。
<今回のポイント>
- 燃油サーチャージは航空会社の燃料費高騰リスクをカバーする仕組み
- 2カ月ごとに金額が改定され発券日が基準
- 長距離になればなるほど、人数が多くなればなるほど高額
- 裏技やテクニックを駆使して節約できる
燃油サーチャージは海外旅行者、とくに家族連れには大きな負担になります。次回の旅行では裏技やテクニックを駆使して節約にチャレンジしてみましょう。
それでは、また!